関節リウマチの薬物療法

疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)による薬物療法

治療目標は?

以前は関節リウマチの進行は止めることが出来ないと考えられていました。しかし1999年にメトトレキサートが関節リウマチに対して保険適応され、また2003年には生物学的製剤の国内発売が開始されたことで、病勢の進行を完全に抑制することが可能となり、関節リウマチの治療目標は「痛みを抑えること」から「寛解導入」「寛解維持」へと変化しました。

 

寛解基準は?

「寛解」とは関節の腫れや痛み、炎症がほとんどない状態をいいます。関節リウマチでは3つの寛解を治療目標としています。1つ目は炎症と自他覚症状の消失を意味する臨床的寛解、2つ目は関節破壊の進行がほとんど止まることを意味する構造的寛解、3つ目は身体機能の維持を意味する機能的寛解です。この目標が達成されれば、抗リウマチ薬を内服しながら関節リウマチであることをほとんど自覚することなく、日常生活を送ることが出来るようになります。中には抗リウマチ薬の服用さえも中止し、治癒したと言える状態にまでなる患者さんもいらっしゃいます。

 

関節リウマチの治療薬

関節リウマチ治療の基本は薬物療法です。関節リウマチの治療薬には痛みを和らげるための薬と免疫異常に働きかけて疾患自体を是正する抗リウマチ薬があります。以前はまず関節を安静に保ち、非ステロイド性抗炎症薬(鎮痛薬)、ステロイド、次いで抗リウマチ薬、効果不十分であれば他の薬剤追加または変更というように少しずつ段階的に治療していました(ステップアップ法)。しかし、関節リウマチの関節破壊は適切な治療が行われなければ、発症2年以内に70~90%に単純レントゲンで明らかになる骨びらんが出現することが分かりました。関節破壊を予防するためには診断後速やかに(少なくとも3ヶ月以内)積極的かつ強力に抗リウマチ薬によって治療を開始し、速やかに寛解を達成することを治療の目標とすることが各国のリウマチ学会からも提唱されています。

 

非ステロイド性抗炎症薬

関節痛や腫れを和らげる効果がありますが、関節リウマチに対する免疫異常是正作用や関節破壊抑制作用は証明されていません。以前はほぼ全ての関節リウマチ患者さんに投与されていました。現在では抗リウマチ薬が効果を発揮して関節炎が沈静化するまでの補助薬として使用されています。副作用として、消化管出血、消化管潰瘍があり、特にステロイド薬もしくは少量のアスピリンとの併用で頻度が増すことが知られています。他にも腎機能障害や心血管障害のリスクが報告されています。

 

ステロイド薬

ステロイドには強力な抗炎症作用と免疫抑制作用があり、少量の使用でも痛みを急速に緩和して、関節リウマチの症状を改善させます。妊婦などを含む抗リウマチ薬が十分に使用できない場合や発症早期で炎症が強い場合にのみ投与を考慮します。長期間使用を継続すると副作用が強く出現するため、補助的な使用という位置付けです。メトトレキサートや生物学的製剤により関節リウマチのコントロールが可能となった現在では、必要最低限、最低量で使用し、可及的速やかに減量し中止することが大切です。
ステロイドの副作用は軽いものとしてはムーンフェイス、中心性肥満、痤瘡(にきび)、白血球増多、多毛などがあり、特に注意が必要な副作用としては感染症、骨粗鬆症、骨折、動脈硬化病変(心筋梗塞、脳梗塞など)、ステロイド性糖尿病、消化管潰瘍、白内障、緑内障、高血圧症、脂質異常症、副腎機能低下、精神症状などがあります。

 

抗リウマチ薬

抗リウマチ薬は免疫異常を抑えて関節の炎症や活動性を抑制する薬です。効果が出るまでに平均2~3ヶ月程度かかります。また効果には個人差があり、有効例と無効例があります。現時点で投与前に有効か無効かを判断することは出来ません。有効であっても長期間使用することで効果が減弱する場合があり(エスケープ現象)、その際は他剤への変更を考慮します。

 

  1. メトトレキサート(MTX)
    関節リウマチ治療において最も基本となる重要な薬(アンカードラッグ)です。高い継続率、骨破壊進行抑制効果、他の抗リウマチ薬や生物学的製剤との併用で高い有効性を示すことが世界中から報告されています。予後不良因子を有する場合(高い疾患活動性、骨びらんの存在、関節外症状あり、リウマチ因子・抗CCP抗体陽性)や他の抗リウマチ薬が無効だった場合が適応となります。メトトレキサートが使用できない場合(禁忌)は妊婦・授乳婦、骨髄抑制、慢性肝疾患、腎障害、活動性結核、本剤への過敏症の既往、胸水・腹水を有する患者さんです。このため投与前にスクリーニング検査を行うことは非常に大切です。1週間に6mg(3錠)~8mg(4錠)から内服開始することが多いです。内服方法に特徴があり、週1~2回に分けて内服します。効果発現は早ければ2週間、遅くとも4~8週間で見られます。

    副作用には、メトトレキサートの量を増やすと頻度・程度の増すもの(用量依存性の副作用)と、量に関係なく発生する可能性のあるものがあります。前者には、口内炎、嘔気などの消化器症状、肝酵素上昇、脱毛、骨髄(造血)障害、日和見感染症があります。後者には間質性肺炎があります。このうち、頻度は低いですが重篤な副作用として骨髄障害や間質性肺炎が挙げられ、急速に増悪し致命的になる場合もあるため注意が必要です。他にも、頻度は低いですが、B型肝炎の再活性化やリンパ増殖性疾患などが知られています。メトトレキサート8mg/週程度以上では、用量依存性の副作用を予防するために葉酸5mg~20mg程度をメトトレキサート最終内服の翌々日に週1回内服します。葉酸を含むサプリメントや青汁などの健康食品を使用している患者さんはメトトレキサートの効きが弱まることがあり、サプリメント中止の検討が必要です。

  2. サラゾスルファピリジン(SASP)
    比較的早期で軽症〜中等症の患者さんに有用性があります。また副作用や合併症などによりメトトレキサートが使用できない患者さんにも第一選択薬となります。通常250〜500mgを朝夕食後2回(計500〜1000mg)投与します。海外では3000mgまで使用されることもあります。効果発現は1~2ヶ月と比較的早いことが特徴です。
    副作用は軽微なものも含めると20~30%の患者さんに出現し、開始してから1ヶ月以内に生じることが多いです。皮疹、発熱が多く、肝機能障害、消化管障害、日光過敏症、血球減少症を認めることもあります。サリチル酸が含まれるため、気管支喘息の患者さんは注意が必要です。

  3. ブシラミン(BUC)
    我が国で開発された抗リウマチ薬です。サラゾスルファピリジン同様、比較的早期で軽症~中等症の患者さんに有用性があります。1日50~100mgから開始し、最大300mgまで増量可能ですが、通常は1日100~200mgで使用されます。効果発現は1~3ヶ月程度です。
    発現頻度の高い副作用としては消化器症状や口内炎、味覚異常、皮疹、爪の変色(黄色など)があります。他にも、肝機能障害、間質性肺炎、腎障害などがあります。このうち特に注意しなければならない副作用は腎障害(蛋白尿、ネフローゼ症候群)です。定期的な尿検査を行うことが必要で、特に蛋白尿が出現した際には速やかに薬剤を中止することにより、多くの場合腎機能は速やかに改善します。

  4. タクロリムス(TAC)
    筑波山の土壌にすむ放線菌から発見され我が国で開発された免疫抑制薬です。臓器移植時の免疫抑制に対して中心的な役割を担っていますが、2005年に関節リウマチへの適応が認められました。血中の濃度測定が保険適応になっており、夕食後に内服した後の、日中の診察前の血中濃度(一日の変動の中で一番低い値:トラフ値)が5~10 ng/mlが有効域とされています。
    主な副作用は腎機能障害、耐糖能異常、消化管障害(下痢、嘔気、腹痛)、血圧上昇などです。プログラフを内服時には他薬剤(シクロスポリン、ボセンタン、スピロノラクトン、トリアムテレンなど)やグレープフルーツなどの食べ物との併用には注意が必要となる場合があります。

  5. ミゾリビン(MZB)
    1971年に八丈島の土壌より単離された糸状菌の培養濾液中から発見された免疫抑制薬です。腎機能障害や間質性肺炎があり、メトトレキサートを使用できない患者さんにおいても使用することができます。1日3回に分けて飲むよりも1回で飲む方が血中濃度が高まり効き目が良いことがあります。メトトレキサートと比べると効果は弱いですが比較的安全な薬剤です。

  6. イグラチモド(IGU)
    日本で開発され、2012年に承認された薬です。1日に25mgから開始し、4週間投与後に1日50mgに増量します。単独でサラゾスルファピリジンと同等の有効性を有し、メトトレキサート効果不十分な場合に追加併用効果があります。主な副作用は肝機能障害やリンパ球減少です。ワルファリンとの併用で重篤な出血をきたす可能性があり、併用できません。

  7. レフルノミド(LEF)
    メトトレキサートとほぼ同等の抗リウマチ作用があり、海外ではメトトレキサートの次に多く使用されている抗リウマチ薬です。副作用として下痢、皮疹、肝機能障害、高血圧症などがありますが、日本に導入されてから薬剤性間質性肺炎の報告があり、慎重に使用されています。

  8. 金製剤
    最も古くから使用されている抗リウマチ薬ですが、現在はあまり使用されていません。副作用として皮疹、口内炎、腎機能障害が多いです。

 

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