リウマチ因子(RF)陰性、抗CCP抗体(ACPA)陰性

リウマチの約20%はRF陰性、ACPA陰性

リウマチ因子(RF)陽性、抗CCP抗体(ACPA)陽性は、リウマチの予後不良因子の1つであり、陽性であれば積極的治療が望まれる根拠となっております。また、陽性であれば、リウマチという診断に医師も患者さんもご納得いただきやすいと思います。

ですが、リウマチの約20%はRF陰性、ACPA陰性です。

 

リウマチ因子・抗CCP抗体が陰性であっても、

少なくとも1小関節を含む11関節以上の罹患関節がある(5点)

  かつ

6週以上続いている(1点) or  急性相反応物質が陽性(1点)

であれば、リウマチと診断可能です。

 

リウマチ因子、抗CCP抗体の見方

 

実際、多発関節炎があるのにもかかわらず、RF陰性、ACPA陰性という結果を患者さんが聞くと、”これでも私はリウマチなのでしょうか?”とよくご質問を頂きます。関節エコーでも、活動性の滑膜炎があり、リウマチで間違いない状況であっても、患者さんはRF陰性、ACPA陰性であると“様子を見たい”とおっしゃられます。

 

RF陰性、ACPA陰性リウマチで、様子を見ながらゆっくり治療を行うという治療戦略はあります。

しかし、その経過によって、少なからず関節破壊が起こってしまっては、取り返しがつきません。

RF陰性、ACPA陰性のリウマチでも、
早期治療を!

下記の研究からも、リウマチと診断されれば、RF陰性、ACPA陰性だからといって、いたずらに不要な経過観察時期を待つことなく適切な治療を行うことが、寛解→治癒への近道であると考えられます。

 

血清反応陰性リウマチの予後について取り組んだ研究の結果 (Barra L, et al. J Rheumatol. 2014;41(12):2361-9.Prognosis of seronegative patients in a large prospective cohort of patients with early inflammatory arthritis.) は、この関節炎の病型は重篤であり、過小評価すべきでないことを示しております。

 

症状出現から期間の短いACPA陰性リウマチでは、より優れた転帰が得られる可能性があり、実際に達成されています。
この結果 (Wevers-de Boer K, et al. Ann Rheum Dis. 2012;71(9):1472-7. Remission induction therapy with methotrexate and prednisone in patients with early rheumatoid and undifferentiated arthritis (the IMPROVED study).) は、血清反応陰性リウマチが疾患の初期段階で同定された場合には【治療成功の治療機会の窓】があることを示唆しております。

 

RF陰性、ACPA陰性で最も重要なことは、きちんとリウマチであるかそうでないかを見極めることです。

Window Of Opportunityを逃さないで

リウマチ治療では、Window Of Opportunity (治療機会の窓)という考え方があります。

リウマチは適切な治療が行われなければ、発症2年以内に患者さんの70~90%でレントゲン上骨びらん(関節破壊)が起こってしまします。さらに早期の骨びらんを同定するMRIでは、発症後4ヵ月ですでに45%に骨びらんが起こっているという報告もあります。このような背景により、関節破壊を予防するためには早期に適切な治療を導入する必要があります。

 

早期に診断する重要性

 

また、治療反応性にはある一定の限られた時期にのみ存在する薬剤感受性の高い時期、すなわち、Window Of Opportunity(治療機会の窓)が存在すると考えられており、この扉を開く事が出来れば(この時期内で治療を開始出来れば)、寛解のみならず治癒を目指すことも可能であると考えられています。

 

”window of opportunity”(治療機会の窓)の概念は、窓が閉まる前に適切な治療を開始することが極めて重要であるというものですが、その窓が閉まってしまったとしても、閉まった窓を開けられるお薬、その治療戦略を、現在も日本をはじめ世界中の研究者・臨床者は追い求めています。 当院のオリジナルアニメーションは、皆さんの無限の可能性につながる扉であり、”自らの手で開いて頂きたい”、私も”その扉を開くお手伝いをしたい”という思いを込めています。

 

リウマチ因子(RF)、抗CCP抗体(ACPA)の結果だけでなく、総合的に、リウマチであるかそうでないかを見極めることが大切です。