“メトトレキサート皮下注射(メトジェクト®皮下注シリンジ)の最も効果的な使用方法について”

2023年03月27日 新しい治療法

欧米では主流であるメトトレキサート皮下注射(メトジェクト®皮下注シリンジ)が日本においても使用できるようになりました。

 

メトトレキサート皮下注射(メトジェクト®皮下注シリンジ)の最も効果的な使用方法について考えてみたいと思います。

 

メトトレキサート(MTX)は関節リウマチ治療には欠かすことのできない、第1選択薬であり、最も中心に位置するアンカードラッグであります。しかしながら、MTXほど内服方法が先生毎、医療機関毎で異なる薬剤はないかもしれません。

といいますのも、MTXは8錠(16mg)まで内服可能で、週1~3回に分けて、服薬します。

 

例えば、8錠を治療として内服する場合、

分1の場合、8錠1回8-0-0で内服方法は同じとなりますが、(当院では、ほとんどの患者さんに分1で内服して頂いております)

分2の場合、12時間毎7-0-1、6-0-2、5-0-3、4-0-4、あるいは、24時間毎4-0-4などさまざまな内服方法

分3の場合、12時間毎5-0-1-1、4-0-1-1、3-0-3-2などなどさまざまな内服方法

が存在します。

 

分2や分3の問題点として、分けて内服するので、内服を忘れてしまったり、内服する時間がずれてしまったりなどがあり、分1の問題点として、1度に飲むので、口内炎や嘔気などが起こりやすかったりします。

1度に内服出来るのであれば、分1で内服することが同じ用量で最大の効果を発揮できることが分かっております。

 

例えば、8錠を分2、分3で服用していて、寛解に到達できていなかった患者さんが、分1に服用方法を変更しただけで、寛解に到達出来たということは結構あることです。

このように、MTXの内服薬による治療は、内服方法の違いによって、その用量分の効果が現れていない可能性が懸念されます。

 

そして、経口剤(oral)と注射剤(SC)での効能については、

 

 

◆同じ用量での有効性の差

【参考文献タイトル】

Comparison of the Clinical Efficacy and Safety of Subcutaneous Versus Oral Administration of Methotrexate in Patients With Active Rheumatoid Arthritis

【ポイント】

経口剤(oral)、注射剤(SC)それぞれ15㎎ で同じ用量にて比較しております。SCの方がoralに比べて有意な改善が認められております。

※P77 Figure.3より抜粋

 

 

◆早期RA患者における有効性と継続率の違い

【参考文献タイトル】

The comparative effectiveness of oral versus subcutaneous methotrexate for the treatment of early rheumatoid arthritis

【ポイント】

 SCの方がOralに比べて、高用量のMTXを使うことができ十分な効果が得られたため、 治療変更をする率が低く服薬継続率が高くなりました。

 こちらのデータは、より早期のRA患者さまにSCが望ましいかもしれない。

※P1006 Fig.2より抜粋

 

 

◆PG濃度の違いによる有効性の差

【参考文献タイトル】

Red blood cell methotrexate polyglutamates emerge as a function of dosage intensity and route of administration during pulse methotrexate therapy in rheumatoid arthritis

【ポイント】

OralからSCのMTXに切り替えると、短鎖MTXPGよりも より強力な阻害剤であることが知られている長鎖 MTXPGの濃度が上昇し、

それと同時に、疾患活動性も31%減少(P<0.02) 。OralからSCへ切り替える根拠の一つになると考えておりま す。

※P2342 Fig.3より抜粋

 

これらの結果を踏まえ、

メトトレキサート皮下注射(メトジェクト®皮下注シリンジ)を効果的に使用した結果について考察したいと思います。

 

①MTX治療のポテンシャルを最大限発揮できるようになり、生物学的製剤やJAK阻害剤を使用するまでの期間が長くなり、その割合も低下する可能性を秘めている。

②経済的負担が厳しく、どうしても生物学的製剤やJAK阻害剤を使用できない方の治療効果の上昇が望まれる。

 

MTXに限らず、皮下注射の治療はできるだけ行いたくないと思います。特に、日本人は注射治療に対して抵抗が強いかもしれません。

しかし、このような結果が期待できるため、できれば打ちたくない皮下注射も効能と安全性を期待して、行うことが出来るかもしれません。

 

・MTX内服治療で効果不十分の場合、内服を皮下注射へ変更することも治療選択肢の一つにされてみて下さい!!

・あるいは初期治療の段階から、効能・安全性を期待して、MTX皮下注射治療にて治療を開始してみてください!!

 

 

 

  • ※P77 Figure.3より抜粋

    ※P77 Figure.3より抜粋

  • ※P1006 Fig.2より抜粋

    ※P1006 Fig.2より抜粋

  • ※P2342 Fig.3より抜粋

    ※P2342 Fig.3より抜粋