アクテムラの特徴

  • 日本で製造された薬
  • IL-6受容体阻害薬
  • 点滴、皮下注射、オートインジェクターが選択可能
  • 4週に1回の点滴(約1時間)または2週に1回の皮下注射
  • 皮下注射、オートインジェクターによる在宅自己注射が可能
  • リウマトレックスとの併用が必須ではない

アクテムラのしくみ

臨床効果の発現は早ければ1ヶ月、平均して3ヵ月でみられます。

 

アクテムラは炎症の元になるIL-6の働きを抑制する薬です。IL-6はTNFと同じくサイトカインの1種ですが、TNFとは分子構造が違います。IL-6を抑制する製剤メトトレキサートは、現在アクテムラのみです。 日本で開発された薬で、TNFα阻害薬による治療で十分効果が現れない人にも効果が期待できます。TNFα阻害薬と比べ、効果が現れるのには時間がかかりますが、いったん効き始めると安定した効果が得られると考えられています。

アクテムラの使用方法

投与方法が選べる

アクテムラは、点滴、皮下注射、オートインジェクターの選択が可能です。

点滴は4週に1回(約1時間)です。点滴を受ける間隔は4週間に1回なので、1カ月に1回の通院時に受けられます。

皮下注射・オートインジェクターは2週に1回です。皮下注射は、在宅自己注射することも可能です。2017年6月26日よりアクテムラ162mg皮下注射が、1週間毎まで投与期間の短縮を行えるようになりました。

メトトレキサート併用について

レミケード(MTX併用必須)、エンブレル・ヒュミラはMTX併用によって臨床効果・関節破壊抑制効果が発揮されたのに対し、アクテムラは単独療法(アクテムラのみ)でも高い有効性が証明されております。

 

メトトレキサートは、リウマチ治療のアンカードラッグでありますが、アレルギー性に起こる肺障害、リンパ増殖性疾患などが起こり得る可能性があるため、メトトレキサート併用で治療効果の上乗せが少ないアクテムラは、メトトレキサートを使用できない方、メトトレキサートを使用したくない方にとって、極めて重要な薬剤です。メトトレキサート併用が行えない場合の生物学的製剤は、アクテムラ投与が推奨されています。

長期使用の安全性

一次無効、二次無効が極めて少なく、生物学的製剤の中で最も継続率が高いです。これは、アクテムラがヒト化製剤であり、B細胞の活性化を抑制することで、抗体産生を抑制し、その結果アクテムラに対する抗体産生が極めて少ない(2~3%)ためと考えられます。

 

2015年6月10日から13日までイタリア・ローマにて開催された欧州リウマチ学会(The European League Against Rheumatism 2015)において、アクテムラのリウマチ患者さんを対象とした試験結果に基づく国内の新しい知見が発表されました。

 

関節リウマチ患者さんを対象とした製造販売後調査の3年フォローアップ結果

 

タイトル

Long term safety for tocilizumab in real-world setting; 3 year follow-up postmarketing surveillance of 5573 patients with rheumatoid arthritis in Japan

 

発表概要
3年間にわたり、国内の実臨床でアクテムラを投与した関節リウマチ患者さんの安全性を評価した調査です。死亡事象、悪性腫瘍、心機能障害、消化管穿孔、重篤な感染症の発現率の経時的な上昇は認められず、アクテムラの長期間の投与においても新たな安全性上の懸念は認められませんでした。

豊富なエビデンス

SATORI試験

TNF阻害剤が全般的にメトトレキサート併用にて、それぞれが持つポテンシャルが最大限発揮されるのに対し、アクテムラは、メトトレキサート非併用(単独投与)においても、メトトレキサート単独治療より極めて有効であることが示されています。

ACT-RAY試験、SURPRISE試験

アクテムラ単剤治療は、MTX併用治療と遜色ないことが示され、ただ関節破壊抑制効果は、MTX併用の方がやや良好であり、MTX併用による+α効果は期待できるとされています。

ADACTA試験

アクテムラ単独治療とヒュミラ単独治療で比較すると、アクテムラ単独治療の方が有効性が高いことが示され、単剤であればアクテムラはTNF阻害剤よりも有効性が高いことが示されました。ヒュミラについても、きちんとMTX治療を行えれば、ヒュミラフリーも可能な極めて有効性の高い薬剤であることは疑う余地はありません。

 

そのため、アクテムラはTNF阻害剤と並んで生物学的製剤の第一選択薬として推奨され、メトトレキサートが併用できない場合には、特にアクテムラが推奨されております。

FIRST-BIO試験

生物学的製剤投与歴のない839例の方にアクテムラを投与し、その高い臨床的・機能的寛解の達成と維持を証明しました。

 

背景

●平均罹病期間7.5年・・・・・・発症後長期罹患している方を多く含む症例

 

●stageⅠ;25.7%、stageⅡ;34.6%、stageⅢ;21.9%、stageⅣ;17.8%・・・・・・関節破壊のない症例から高度の症例まで

 

●DMARDs投与が、83.6%・・・・・・併用薬の有無や内容は問わない

 

●MTX投与が、63.9%(試験開始時平均9.1mg/週、52週時点6.4mg/週)・・・・・・アンカードラッグであるMTX併用は6割で、52週時点では減量されている

 

●ステロイド投与が、54.9%(試験開始時平均5.4mg、52週時点2.6mg)・・・・・・約半数以上にステロイドが投与され、52週時点では半量に減量されている

 

結果

●DAS28(ESR)寛解

12週時点で57.4%、24週時点で64.9%、52週時点で68.5%(発症2年未満;74.2%、発症10年以上;60.2%)

 

●CDAI寛解

12週時点で17.9%、24週時点で31.1%、52週時点で36.8%(発症2年未満;42.9%、発症10年以上;33.5%)

 

●Boolean寛解

12週時点で17.5%、24週時点で27.7%、52週時点で33.1%(発症2年未満;37.8%、発症10年以上;28.7%)

 

●HAQ-DI寛解

12週時点で59.8%、24週時点で62.0%、52週時点で65.1%(発症2年未満;77.6%、発症10年以上;46.4%)

 

バイオナイーブで、平均罹病期間7.5年の方々に対し、併用DMARDsに関わらず、最も厳しい寛解基準であるBoolean寛解を52週時点で33.1%(3割以上)達成し、HAQ-DI寛解は、65.1%で達成していたという驚くべき有効性でありました。

また、発症2年未満の方が有効性は高いものの、発症10年以上でも高い有効性が証明され、どのような症例に対してもファーストバイオとしてアクテムラの高い有効性が証明された重要な試験でありました。

U-Act-Early試験

アクテムラの単独またはMTXとの併用療法の有効性と安全性を、MTX単独療法と比較した試験です。発症の早期のリウマチの方にアクテムラを投与すれば、メトトレキサート併用の有無にかかわらず、約9割の方が寛解維持達成できるという、驚くべき結果が得られました。

 

さらには、2016年EULAR(ヨーロッパリウマチ学会)で報告されたU-Act-Ealry試験2年後の追跡調査で、寛解を維持された方々の休薬の可能性に関して報告されました。アクテムラ+MTX併用で35%休薬、アクテムラ単独で27%、MTX治療で11%休薬可能という結果でありました。

ドラッグフリーの可能性

アクテムラ単独療法からの薬剤中止を試みた本邦のDREAM試験では、アクテムラを中止し、再燃なく1年以上維持出来た方は10-20%で、再燃しても再投与行うと速やかに回復するという結果でありました。この試験は、メトトレキサート併用がなく、バイオフリーというよりいわばドラッグフリーというより高いハードルにもかかわらず、ドラッグフリーが10-20%可能であったのは、驚くべき結果と捉えられます。

難治性病態への光明

アクテムラの点滴製剤は、リウマチ以外にも保険適応があり、難治性病態への光明となっています。

 

リウマチ以外の保険適応

①多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎

②全身型若年性特発性関節炎

③キャッスルマン病

④高安動脈炎

⑤巨細胞性動脈炎

 

高安動脈炎、巨細胞性動脈炎は国の難病に指定されている病で、治療の第一選択薬は副腎皮質ステロイド薬です。しかしながら、副腎皮質ステロイド薬の長期投与による重篤な副作用や副腎皮質ステロイド薬の漸減過程において疾患の再発をしばしば認めていたことから、新たな治療戦略が長い間望まれておりました。

そのような背景の中、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎にアクテムラ皮下注射162mgシリンジ/162mgオートインジェクターの1週間間隔での治療が使用可能となりました!! 疾患の完全制御による臓器病変の消失やステロイド副作用からの脱却など高安動脈炎、巨細胞性動脈炎の方々にとって、多くの希望となることが期待されております。