関節リウマチ治療に用いられる免疫抑制薬にはいくつか種類がありますが、その中でも最も使われているのが「メトトレキサート(MTX、商品名はリウマトレックス)」です。関節破壊を遅延でき、生命予後を改善できることが確認されている唯一の抗リウマチ薬です。
メトトレキサートは
世界の標準薬
メトトレキサートは世界で最も使われている免疫抑制薬で、欧米ではリウマチ患者さんの70%以上が服用しているといわれます。日本では1999年に関節リウマチの治療薬として保険適用が認められました。
高い継続率、骨破壊進行抑制効果、他の抗リウマチ薬や生物学的製剤との併用で高い有効性を示すことが世界中から報告されています。
比較的早く効く
メトトレキサートは服用開始後、早ければ2週間、遅くとも4~8週間で効果がみられます。抗リウマチ薬は効き目が現れるのが遅い(2~3ヵ月)薬が多いため、メトトレキサートは比較的早く効果が出る薬といえます。
有効率が高い
エスケープ現象*が少なく、3年以上経過しても50%以上の方が服用を継続しています。数ある抗リウマチ薬の中でもメトトレキサートの有効率の高さは群を抜いています。
*エスケープ現象:抗リウマチ薬によって関節リウマチがコントロールされ、良好な状態にあった方が、同じ薬をつづけているにも関わらず、再び病気が活発になってしまうこと。
メトトレキサートのしくみ
メトトレキサートは「葉酸」の産生を抑制することで、骨や軟骨の破壊を防ぎます。
葉酸は細胞が分裂・増殖する時に重要な物質で、これを抑えることによって、関節で活発になってる免疫細胞(T細胞、滑膜細胞)の増殖をコントロールできるわけです。
メトトレキサートの
副作用を防ぐために
用量依存的な口内炎、肝障害、骨髄抑制と用量非依存的な(アレルギー性)薬剤性肺障害に注意します。また、感染症にも注意です。気にしすぎる必要はありませんが、日々の体調(発熱、咳、体調不良)を気にかけて頂き、お変わりがあれば早めに主治医に相談頂く事で、大事に至ることなく、メトトレキサートを慎重に継続し続けることが、最も耐用性が高いことに繋がっております。
葉酸を含むサプリメントや青汁などの健康食品を使用している患者さんは、メトトレキサートの効きが弱まることがあり、サプリメント中止の検討が必要です。
メトトレキサートの投与方法
欧米では、0.3mg/kgの週1回投与が一般的で、当院でも週1回朝食後に全量を1回で内服し、メトトレキサート最終投与後48時間後に葉酸(フォリアミン)5mg服用します。
投与例
●メトトレキサート(2)8錠:1日1回朝食後 毎週木曜日のみ
●フォリアミン(5)1錠:1日1回朝食後 毎週土曜日のみ
メトトレキサートを
安全に服用するために
メトトレキサートの内服方法は、分1(1週間に1日、朝食後)、分2(12時間あけて、1週間に1日、朝、夕食後)、分3(12時間毎3回、1週間に2日、朝、夕食後、翌日朝来)が可能です。
例:6錠を木曜日に内服する場合
●分1:(6-0-0)朝食後 木曜日
●分2:(5-0-1)あるいは(4-0-2)朝食後、夕食後、木曜日
●分3:(4-0-1)木曜日(1-0-0)金曜日、あるいは(3-0-2)木曜日(1-0-0)金曜日
分1であっても、分2、分3であっても、用量依存性副作用を軽減する目的で、葉酸(フォリアミン)5mgをMTX最終内服48時間後に内服します。
分1、分2、分3でどのように内服するのが良いか?は、まず試みるべきは、分1であると思います。
4錠であっても、8錠であっても、結局、飲み忘れてしまえば、薬はその分の効果を発揮してくれませんので、1週間に1度内服しなければいけない錠数を内服してしまう、というのがMTXの効果を最大限発揮させることが出来ると思います。
患者さんにお聞きすると、分2、分3で内服している方は、月に1~2回は、飲み忘れるとおっしゃいます。
分2、分3が必要な方は、1度に多い錠数を内服すると、どうしても吐き気や消化器症状が起こってしまい、分けて飲まないと内服できない方です。
メトトレキサートと
悪性リンパ腫の関連
メトトレキサートを服用していると悪性リンパ腫が増加する可能性があると言われていますが、リウマチがきちんとコントロールされないと悪性リンパ腫の発症率が上昇する事が分かっておりますので、アンカードラッグであるMTXでリウマチを適切にコントロールする事が重要です。
メトトレキサートを
服用できない場合もある
妊婦・授乳婦、骨髄抑制、慢性肝疾患、腎障害、活動性結核、本剤への過敏症の既往、胸水・腹水を有する患者さんは使用できません。このため投与前にスクリーニング検査を行うことは非常に大切です。
また妊娠を希望する女性は休薬がすすめられます。
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