関節リウマチの診断

早期発見を目的とした
新しい診断基準

リウマチの診断は「この検査が陽性であればリウマチと確定できる」といった決め手はなく、症状や検査結果を元に世界的な診断基準に照らしながら病気の確定を進めていきます。その診断基準が「ACR/EULA(エーシーアール・ユーラー)分類基準」です。

 

以前までリウマチの診断には1987年に作成された分類基準が使用されていましたが、関節リウマチの初期段階での診断には不向きであることが問題視されていました。関節リウマチの早期発見を目的として2009年に作成されたのが「ACR/EULA(エーシーアール・ユーラー)分類基準」(共同作成:米国リウマチ学会・欧州リウマチ学会)です。

1カ所でも関節に腫れがあれば、
関節リウマチを考える

ACR/EULA分類基準では、関節の腫れが1カ所でもあれば関節リウマチを疑い、別の病気ではないことを確認していきます。

単純X線写真で骨びらんがあれば関節リウマチと診断します。骨びらんがない場合でも、分類基準のスコア(表1)の合計が6点以上であれば関節リウマチと診断します。

  • ※下のイメージは横スクロールでご覧頂けます。

    ACR/EULA分類基準

表1:分類基準

下記の分類(1)~(4)の合計スコアを算出します。

6点以上は関節リウマチです。

 

(1)腫れ、または圧痛のある関節の数

●小関節:手の親指の第1・第2関節、人差し指~小指の第2・第3関節、手首の骨びらん

●中・大関節:肩、ひじ、ひざ、股、足首の骨びらん。変形性関節症との鑑別のため、手指の第1関節、足親指の第1関節は除外する。

 

腫れ、または圧痛のある関節の数 スコア
中、大関節の1カ所 0
中、大関節の2~10カ所 1
小関節の1~3カ所 2
小関節の4~10カ所 3
最低1つの小関節を含む11カ所以上 5

 

 

(2)血清反応

●陽性基準は、施設ごとの正常値を超える場合

●低値陽性は、正常上限~その3倍まで

●高値陽性は、正常上限の3倍を超える場合

 

血清反応 スコア
リウマトイド因子、抗CCP抗体の両方が陰性 0
リウマトイド因子、抗CCP抗体のいずれかが低値陽性 2
リウマトイド因子、抗CCP抗体のいずれかが高値陽性 3

 

 

(3)罹患期間

●評価時に、腫れまたは圧痛関節のうちで、患者が申告する罹患期間

 

罹患期間 スコア
6週未満 0
6週以上 1

 

(4)炎症反応

●陽性基準は施設ごとの正常値を超える範囲

●スコアリングには最低1つの血清反応と最低1つの炎症反応の測定が必要

 

罹患期間 スコア
CRP、ESRの両方が正常 0
CRPもしくはESRのいずれかが異常高値 1

リウマチ以外の病気の可能性を鑑別

ACR/EULA分類基準は、早期診断をする上でとても役立ちますが、関節リウマチと似た症状の病気が含まれてしまう場合があり、鑑別が非常に重要になります。

関節リウマチ鑑別疾患難易度別リスト

※ACR/EULA分類基準使用時

難易度:高

  • ウイルス感染に伴う関節炎(パルボウイルス、風疹ウイルスなど)
  • 全身性結合組織病(シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、皮膚筋炎・多発性筋炎、強皮症)
  • リウマチ性多発筋痛症
  • 乾癬性関節炎

難易度:中

  • 変形性関節症
  • 関節周囲の疾患(腱鞘炎、腱付着部炎、肩関節周囲炎、滑液包炎など)
  • 結晶誘発性関節炎(痛風、偽痛風など)
  • 血清反応陰性脊椎関節炎(反応性関節炎、掌蹠膿疱症性骨関節炎、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患関連関節炎)
  • 全身性結合組織病(ベーチェット病、血管炎症候群、成人スチル病、結節性紅斑)
  • その他のリウマチ性疾患(回帰リウマチ、サルコイドーシス、RS3PEなど)
  • その他の疾患(更年期障害、線維筋痛症)

難易度:低

  • 感染に伴う関節炎(細菌性関節炎、結核性関節炎など)
  • 全身性結合組織病(リウマチ熱、再発性多発軟骨炎など)
  • 悪性腫瘍(腫瘍随伴症候群)
  • その他の疾患(アミロイドーシス、感染性心内膜炎、複合性局所疼痛症候群など)

総合的にに診断する

関節リウマチは診断基準の項目を機械的にあてはめれば分かる、といった単純な病気ではありません。診断基準をふまえながら、患者さんの自覚症状、診察の所見、検査結果などを総合的にみることで正確な診断につながります。

現在関節リウマチには、効果的な薬が数多く存在し、さらには、早期から診断できる診断基準も存在しています。