リウマチ治療にパラダイムシフトをもたらした【レミケード】②バイオフリー寛解の可能性【RRR試験】
2015年06月07日 治療戦略
リウマチ治療では、MTXをアンカードラッグとしTNF阻害剤を併用することにより、高率な臨床的寛解導入が可能となり、さらに寛解を長期間継続することにより、構造的寛解や機能的寛解も可能となりました。しかし、現実には、高価な生物学的製剤に伴う経済的負担、特定の分子を阻害することによる長期安全性を考慮すると、寛解維持後の生物学的製剤中止の可能性、中止のタイミングを検討することが重要でありました。
そのような背景の中、産業医科大学第一内科学講座田中良哉教授を中心とし、日本の26施設がエントリーされた【RRR試験(トリプルアール試験)】が、世界に先駆けてバイオフリー寛解の可能性を検証することを目的として行われました。
【RRR試験】
エントリー;
・MTX+レミケード治療にて、DAS28<3.2(低疾患活動性)を24週以上維持したリウマチの方114例
・平均年齢51歳
・平均DAS 5.5(高疾患活動性)
・平均罹病期間5.9年
・平均TSS63(関節破壊が進行)
結果;
・IFX休薬後1年後55%が、DAS28<3.2(低疾患活動性)を満たし、43%がDAS28<2.6(寛解)を満たしました。
・45%でDAS28の再上昇(>3.2)が認められましたが、大部分でIFXの再開により速やかな疾患制御が得られました。
・低疾患活動性の維持に成功した方々は、1年後に83%で機能的寛解が、67%で構造的寛解が維持されました。
・1年後の低疾患活動性を予測する因子として、休薬時のDAS28値が同定され、その値は、2.22と算出され、タイトコントロールによる深井寛解が重要であることが示されました。
まとめ;
疾患活動性の高い方でも、MTXとIFXを用いて低疾患活動性を半年以上維持すれば、IFXを休薬しても寛解が維持できるバイオフリー寛解の可能性が示され、また、発症早期にタイトコントロールにより深い寛解を維持すれば、バイオフリー寛解導入率が上がることが示されました。更には、【RRR試験】は【Best試験】と比べ、発症後時間が経過し、関節破壊が既に起こってしまっている方々も含まれ、早期診断・早期治療が極めて重要であることは言うまでもありませんが、既に時間が経過し、破壊が起こってしまっている方々にとっても光明となる結果でありました。
この世界に先駆けてバイオフリー寛解の可能性を検証することを目的として行われたRRR試験にて、田中良哉教授は、第10回欧州リウマチ学会・年次集会(EULAR 2009)では日本人初のEULAR awardを受賞されました。