間葉系幹細胞によるリウマチ破壊骨軟骨に対する再生医療の可能性

2015年06月16日 新しい治療法

現在の早期リウマチ診断・早期治療によって、臨床的寛解のみならず構造的寛解が現実のものとなり、現在リウマチと診断された方は、関節破壊・変形の起こらない治療が実現可能となっています。しかしながら、リウマチを長期間患われて、既に関節破壊の起こってしまった方々の関節修復を現実のものとすべく、産業医科大学第一内科学講座田中良哉教授、山岡邦宏先生、園本格士朗先生の未来を切り開く論文を紹介いたします。

 

間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell;MSC)による関節リウマチの骨軟骨再生へのアプローチ

 

園本 格士朗1) 2), 山岡 邦宏1), 田中 良哉1)

1) 産業医科大学 医学部 第1内科学講座

2) 産業医科大学 医学部 分子生物学講座

 

関節リウマチ(RA)は関節炎と関節の構造的障害を特徴とする疾患で,進行すると身体機能障害を引き起こし,就労率の低下や介護といった社会資源の損失をもたらす.元来RAは進行性の疾患と考えられていたが,近年の治療の進歩により関節破壊の完全な進展抑制が現実的となった.しかし,罹病期間が長く新治療の恩恵を受けられなかった,または新治療によっても疾患活動性が制御できないなどの理由で進行した関節破壊を呈する患者は稀でなく,破壊関節を再生しうる治療法の開発が待たれている.

我々は,骨・軟骨に分化可能で抗炎症作用を持つ間葉系幹細胞(MSC)による治療をRAの新規治療法として位置づけ,これまでにMSCが破骨細胞分化抑制作用を持つこと,炎症がMSCの骨芽細胞分化を促進し,軟骨細胞分化を抑制することを報告した.

さらに現在,足場によるMSC移植システムを構築中であり,RA患者への臨床応用は着実に近づきつつあると考えられる. 

 

この研究が臨床応用され、近い将来破壊骨軟骨再生医療が現実のものとなっていくことを切に期待しております。