TNF5剤目であるローディング可能なペグ化皮下注射TNF阻害剤【シムジア】①
2015年05月31日 新しい治療法
ペグ化製剤とは、生体内での安定性を増加させ、ペグ化される分子の抗原性や免疫原性を低下させます。また、血中半減期を延長させ、さらには皮下投与時の吸収を高める効果を持ちます。ヒュミラ、シンポニーの完全ヒト型抗体製剤についで、2012年ペグ化TNF抗体製剤であるシムジア(certolizumab pegol;CZP)が、TNF5剤目として登場しました。
シムジアの最大の特徴は、ペグ化製剤であり、ローディング投与(投与開始時, 2w後, 4w後に400mg皮下注射を行い、一気に血中濃度を上昇させる)可能な皮下注射製剤であることです。ローディング投与を行う最大のメリットは、治療開始早期より効果発現し、また、ペグ化製剤は、炎症部位への集積が強く、炎症の強い所に集積することが知られ、活動性関節炎に効率よく効果を発揮するため、高疾患活動性のリウマチで早期の治療効果を期待する場合、良い適応と考えられます。
シムジアの胎盤および乳汁通過性(動物実験)
リウマチは、若い女性にも発症するため、女性にとって最大のイベントである妊娠および出産とその活動性評価による治療時期、治療薬選択は常にベネフィット、リスクを熟考した上で、行われております。
シムジアは、Fc領域を持たないため胎盤を通過せず、胎児には移行しないとされます。妊娠ラットにシムジアを注射しても胎児、乳児、乳汁からシムジアは検出されませんでした。これはヒトでは証明されておらず、妊娠・授乳中のリウマチの方々へのシムジアの安全性が保障されているものではありませんが、MTX非併用でも効果発現するシムジアは、今後妊娠を予定する方の重要な治療選択肢の一つとなる可能性があります。
有効性
MTX併用試験【RAPID1試験】【RAPID2試験】では、投与1週目には臨床的効果を認め、効果発現が早いことが示されました。関節破壊抑制効果については、MTX単独治療ではmTSSが1.2上昇していたのに対し、シムジア200mg治療で、0.2(構造的寛解を達成)、400mg治療では、-0.4とマイナスを示し、関節破壊を修復する可能性が示されました。
【FAST4WARD試験】で、シムジア単独治療の有効性が示されました。
【TNF阻害剤】 ①レミケード ②エンブレル ③ヒュミラ ④シンポニー についで登場したシムジアですが、それぞれ重要な薬剤的特徴があり、これにアクテムラ、オレンシアを加え、7種類の生物学的製剤が使用可能となっております。これに8剤目のバイオシミラー(インフリキシマブBS)を加えれば、8種類存在し、この生物学的製剤の存在は、寛解を目標としたリウマチ治療に多大なる貢献をしてくれています。寛解導入・維持の先には、バイオフリー(バイオホリデー)があり、その先には、ドラッグフリーがあり、その先には、治癒が待っているものと思います。
シムジアについては、ローディングを行い、早期より効果発現する結果、寛解導入までの期間短縮、その結果として、バイオフリー(バイオホリデー)の可能性が高まることを期待しております。