日本で開発された初の生物学的IL-6阻害剤【アクテムラ】①
2015年05月27日 新しい治療法
2008年4月私が産業医大第一内科に国内留学に行くと同時に使用可能となったのがアクテムラ(tocilizumab;TCZ)です。
IL-6は、岸本忠三先生が、1986年発見し、その後の研究により非常に多様な生理作用を持つこと、さらにリウマチ病態形成に重要な役割を果たしていることが分かりました。それを制御すべく、日本で研究・開発されたものがヒト化ヒトインターロイキン6(IL-6)レセプターモノクローナル抗体であるアクテムラです。 2003年レミケード、2005年エンブレル、2008年ヒュミラとすべてTNF制御による生物学的製剤の中、世界に先駆けIL-6制御剤アクテムラが使用できるようになりました。欧州で2009年、米国でも2010年承認され、現在世界中で使用されおります。 産業医大での時間の経過は、すなわちアクテムラの発売後時間経過であり、私にとって極めて思い出深い薬です。
【投与方法】
レミケード;点滴(0, 2w, 6w, 以降8w毎)
エンブレル;皮下注射(1w毎)
ヒュミラ;皮下注射(2w毎) と、投与方法が決まっている中、アクテムラは、点滴、皮下注射で選択可能となっております。
アクテムラ; 点滴(8mg/kg):4w毎、1時間 皮下注射162mg:2w毎
(さらに、シリンジタイプ、オートインジェクタータイプで選択可能)
【特徴】
・これまでのレミケード(MTX併用必須)、エンブレル・ヒュミラはMTX併用によってはじめて驚くべき臨床効果、関節破壊抑制効果が発揮されたのに対し、アクテムラは単独療法(アクテムラのみ)でも高い有効性が証明されております。
・一次無効、二次無効が極めて少なく、生物学的製剤の中で最も継続率が高いです。これは、アクテムラがヒト化製剤であり、B細胞の活性化を抑制することで、抗体産生を抑制し、その結果アクテムラに対する抗体産生が極めて少ない(2~3%)ためと考えられます。
・臨床効果の発現は早ければ1ヶ月、平均して3ヵ月でみられます。
・豊富なエビデンスが構築されており(SAMURAI試験(2007年)、TOWARD試験(2008年)、OPTION試験(2008年)、RADIATE試験(2008年)、SATORI試験(2009年)、AMBITION試験(2010年)、LITHE試験(2011年))、アクテムラは臨床的寛解、構造的寛解、機能的寛解を期待できる薬剤です。
・アクテムラ単独療法からの薬剤中止を試みた本邦のDREAM試験では、アクテムラを中止し、再燃なく1年以上維持出来た方は10-20%で、再燃しても再投与行うと速やかに回復するという結果でありました。この試験は、MTX併用がなく、バイオフリーというよりいわばドラッグフリーというより高いハードルにもかかわらず、ドラッグフリーが10-20%可能であったのは、驚くべき結果と捉えられます。
・MTX併用が行えない場合の生物学的製剤は、アクテムラ投与が推奨されております。
アクテムラの点滴製剤は、リウマチ以外にも保険適応があり、難治性病態への光明となっています。
①多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎
②全身型若年性特発性関節炎
③キャッスルマン病 TNF阻害剤が6種類もある一方で、IL-6阻害剤はアクテムラ1種類しか存在しない現時点でも、これからもアクテムラは、リウマチ治療にとってかけがえのない薬剤であり続けると思います。