リウマチ治療にパラダイムシフトをもたらした【レミケード】①

2015年05月27日 新しい治療法

リウマチ治療に画期的なパラダイムシフトを齎し、光明となった生物学的製剤がレミケード(infliximab;IFX)です。

 

米国では、1998年リウマチに対して認可され、日本では2003年7月承認されました。またその後の適切な臨床試験(RISING試験)の結果により、2009年7月に効能・効果追加(関節の構造的損傷の防止)、用法・用量変更(増量・投与間隔の短縮)が可能となりました。

 

レミケードは、通常3mg/kgを1回投与量として点滴静注します。投与間隔は、初回投与後、2週、6週に投与し、以降8週間隔で行われ、2時間の点滴です。その後、30~60分まで投与時間の短縮が可能となっています。

 

レミケードで最も画期的であった臨床試験が、BeSt studyです。これは、発症2年以内の未治療リウマチ治療で、治療開始時よりMTX+IFX治療を行うことによって、2年後に56%がIFX中止可能(バイオフリー寛解)となり、5年後にはMTXも休薬となった薬剤フリー寛解(19%)も含めると58%がバイオフリー寛解を維持可能でありました。この試験の結果によって、リウマチは治癒する可能性がある疾患へと変貌を遂げることとなりました。

 

さらにわが国では、産業医科大学第一内科学講座田中良哉教授を中心にRRR試験(トリプルアール)が世界中で脚光を浴びました。それは、BeSt studyと比べ、罹病期間が長く、関節破壊の進んだ方々であっても、IFX休薬後1年間55%の方々が低疾患活動性を維持でき、その67%で構造的寛解を維持しておりました。低疾患活動性を維持するためには、IFX投与時に、出来るだけお若く、罹病期間が短く、関節破壊の程度が軽いことが重要であることが分かりました。早期リウマチでなくてもIFX中止が可能であることが示され、世界中の長い間リウマチで苦しんでいた方々の光となる結果でありました。ただ、可能な限り早期の導入が重要であることも同時に示されております。

 

このわが国で一番初めに承認された生物学的製剤であるレミケードは、これまで数多くのエビデンスに実証された有効性を持ち、TNF阻害剤唯一の点滴製剤であり、これからもリウマチ治療になくてはならない薬剤であります。今後、導入前のTNF-α濃度を指標にIFX量を設定し、各々にあったテーラーメード医療を行える可能性の秘めた薬剤でもあります。

 

レミケードは、リウマチ以外にも数多くの難治性疾患の保険適応があり、
ベーチェット病による難治性活動性ぶどう膜炎
③関節症性乾癬
④膿疱性乾癬
⑤乾癬性紅皮症
⑥強直性脊椎炎
⑦次のいずれかの状態を示すクローン病の治療及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
  ・中等度から重度の活動期にある方
  ・外瘻を有する方
⑧中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)