生物学的製剤の投与ガイドラインについて【TNF阻害剤、アクテムラ、オレンシア】

2016年05月09日 治療戦略

関節リウマチ診療は、発症早期の方であっても罹病期間が長い方であっても、アンカードラッグであるメトトレキサート(MTX)を中心とした、必要があれば生物学的製剤治療によって、臨床的寛解を目標とした治療戦略が可能な時代となっております。   既存治療で中~高疾患活動性が長期間続いているのにも関わらず、生物学的製剤の存在を知らない方、話を聞いたことがない方、”まだ投与するには早い”と言われている方が数多くいらっしゃいます。   現在日本では8種類の生物学的製剤が使用可能となっておりますが、それらの投与ガイドラインについて解説します。   【TNF阻害剤】レミケード、エンブレル、ヒュミラ、シンポニー、シムジア、インフリキシマブBS   1. 既存の抗リウマチ薬(DMARD)註1)通常量を3ヶ月以上継続して使用してもコントロール不良のRA患者。 コントロール不良の目安として以下の3項目を満たす者。 ・圧痛関節数6関節以上 ・腫脹関節数6関節以上 ・CRP 2.0mg/dl以上あるいはESR 28mm/hr以上

これらの基準を満たさない患者においても、 ・画像検査における進行性の骨びらんを認める ・DAS28-ESRが3.2(moderate disease activity)以上 のいずれかを認める場合も使用を考慮する。   註1) インフリキシマブの場合には、既存の治療とはMTX 6~16mg/週を指す。エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブおよびセルトリズマブペゴルの場合には、既存の治療とはMTX、サラゾスルファピリジン、ブシラミン、レフルノミド、タクロリムスを指す。   2. 既存の抗リウマチ薬による治療歴のない場合でも、罹病期間が6ヵ月未満の患者では、DAS28-ESRが5.1超(high disease activity)で、更に予後不良因子(RF陽性、抗CCP抗体陽性又は画像検査における骨びらんを認める)を有する場合には、MTXとの併用による使用を考慮する。

 

【IL-6阻害療法】アクテムラ

 

1. 既存の抗リウマチ薬(DMARD)註1)通常量を 3 ヶ月以上継続して使用してもコ ントロール不良の関節リウマチ患者。
    コントロール不良の目安として以下の 3 項目を満たす者。
・疼痛関節数 6 関節以上
・腫脹関節数 6 関節以上
・CRP 2.0mg/dL 以上あるいは ESR 28mm/hr 以上

 

これらの基準を満たさない患者においても、
・画像検査における進行性の骨びらんを認める
DAS28-ESR が 3.2(moderate activity)以上
 のいずれかを認める場合も使用を考慮する

 

註 1) 既存の抗リウマチ薬とは、メトトレキサート、サラゾスルファピリジン、ブシラミン、レフルノミド、タクロ リムス、生物学的製剤のインフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、アバタセプト、 セルトリズマブぺゴルのいずれかを指す。

 

【T細胞共刺激阻害療法】オレンシア

 

1. 既存の抗リウマチ薬(DMARD)註1)通常量を3ヶ月以上継続して使用してもコントロール不良の関節リウマチ患者。 コントロール不良の目安として以下の3項目を満たす者。

・疼痛関節数6関節以上
・腫脹関節数6関節以上
・CRP 2.0mg/dL以上あるいはESR 28mm/hr以上

 

註1)既存の治療とは、メトトレキサート、サラゾスルファピリジン、ブシラミン、レフルノミド、タクロリムス、生物学的製剤のインフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、トシリズマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴルを指す。   生物学的製剤は、関節リウマチに対する治療薬として保険適応となっておりますが、それでも3割負担の方では、2~8万円/月と高価な薬剤です。よく”一生使い続けなければならないの?”というご質問を頂きます。高額医療制度を使用されたり、ご負担が極力少なることを検討致しますが、まずは”根本的治療による苦痛からの解放、普通に生活できる・あたりまえのことを当たり前にできるということ””関節破壊・変形による日常生活動作の低下防止”を享受頂き、それから、生物学的製剤の安全な休薬、投与間隔の延長を目指して頂ければと考えます。

  生物学的製剤はガイドラインに準じて使用すれば、たいていは安全に(100%安全な薬は存在しません)、劇的な治療効果が得られます!!   生物学的製剤が費用的・経済的に使用できない方でも、治験を含めさまざまな治療選択肢がありますので、決して治療をあきらめないでください!!   関節リウマチ治療・治療選択肢・治療効果・副作用について、ご質問・ご相談があれば、お気軽にお問い合わせください!! 湯川リウマチ内科クリニック 0422-31-1155