リウマチ治療にもたらされたパラダイムシフトって?

2015年05月24日 治療戦略

リウマチの最大の問題点は、関節破壊です。リウマチの関節破壊(骨びらん)は発症6ヶ月以内に出現する事が多く、最初の1年間の進行が最も顕著です。そして罹病期間が長くなると、関節破壊が進行して、QOLが低下し、さらに合併症(間質性肺炎、アミロイドーシス)の頻度が上昇してしまいます。このため、これまでのリウマチの死因は、肺炎などの感染症や心血管障害が主体で、生命予後は正常人と比較して10年短いと言われてきました。

 

MTX、生物学的製剤の登場により状況は大きく変わりました。抗CCP抗体の臨床応用、新たな分類基準によるリウマチの早期診断が可能となった事も相まって、これまでの治療目標は臨床症状の軽減とADLの改善でありましたが、現在の治療目標は寛解の導入と維持と変貌を遂げております。

 

MTX登場前のこれまでのリウマチ治療法は、ピラミッド療法と呼ばれておりました。これは、鎮痛薬(NSAIDs)から治療を開始し、効果がなくて初めて、副作用がある抗リウマチ薬が始まるという、緩徐で・マイルドな治療法でありました。(go slow, go low)
しかし、この治療法では、関節破壊を阻止する事が出来ませんでした。

 

このため、早期から寛解を目指しMTXを第一選択薬とし開始し、効果不十分であれば、生物学的製剤を併用する積極的治療を行うスタイル(go fast, go high)へ変貌を遂げました。これはいわば逆ピラミッド療法とも言えます。

 

パラダイムシフトとは、その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化することをいい、例えば、地動説コペルニクス&ガリレオ)、DNA二重螺旋構造ワトソン&クリック)、日本でいう幕末→明治維新が挙げられます。

 

リウマチ治療にこの劇的なパラダイムシフトがもたらされ、すなわち極めて早期診断・早期治療が重要で、中には、治癒する方々もおられます。