血圧を下げる薬は、降圧薬と呼ばれています。
降圧薬と呼ばれる薬は種類が多く、薬によって出現する副作用も様々です。
今回の記事では、以下のような内容を紹介します。
- 降圧薬の種類
- 薬を飲み始める際の注意点
- 降圧薬のメリット
- 降圧薬のデメリット
- 降圧薬以外で血圧を下げる方法
降圧薬について理解するためにもご参照頂けますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
血圧を下げる代表的な薬の種類
ここからは、降圧薬の代表例についていくつか紹介していきます。
血圧を下げる薬といっても、身体のなかでどのように作用しているのかは薬の種類によってそれぞれです。
くすりの種類によってどのような作用の違いがあるのか、順番にみていきましょう。
血圧を下げる薬①カルシウム拮抗薬
カルシウム拮抗薬は、日本では一番使用されている薬です。
血管を広げて血流を良くすることにより、血圧を下げる効果が期待できます。
心臓の血管を広げる作用もあることから、狭心症の治療にも使用されています。
製品名として、
- アダラート
- アムロジン
- カルブロック
- ヘルベッサー
- セバミット
などが挙げられます。
血圧を下げる薬②アンギオテンシンⅡ受容体遮断薬(ARB)
アンギオテンシンⅡ受容体遮断薬は、「アンジオテンシン」という、血圧上昇にかかわるホルモンの作用を抑えることによって血圧を下げる効果が期待できます。
副作用が少なく済むことが大きな特徴です。
製品名として、
- ミカルディス
- オルメテック
- ニューロタン
などが挙げられます。
血圧を下げる薬③アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害)
ACE阻害薬は、血圧の上昇を引き起こす原因と考えられている「アンジオテンシン」の生成を抑えることによって、血圧を下げる効果が期待できます。
製品名として、
- タナトリル
- レニベース
- エースコール
などが挙げられます。
血圧を下げる薬④利尿剤
血液中の水分量が多くなってしまうと、血圧が高くなります。
利尿剤は腎臓に働きかけて尿の作用を促す作用があり、血液中の水分量を減らすことによって血圧を下げる効果が期待できます。
製品名として、
- ラシックス
- アルダクトン
- ナトリックス
- セララ
などが挙げられます。
血圧を下げる薬⑤心臓の働きを抑える薬(β遮断薬)
β遮断薬は、自律神経に働きかけて血管の収縮を防ぐ作用が見込めます。
血圧は心臓の拍動の増加に比例するため、拍動を調整することによって血圧を下げる効果が期待できます。
製品名として、
- テノーミン
- メインテート
- アドビオール
などが挙げられます。
血圧を下げる薬の仕組み
降圧薬にはたくさんの種類がありますが、医師は患者さんの年齢や高血圧の重症度、合併症の有無などを考慮し、患者さんに最も適している薬を処方しています。
降圧薬を大きく分けると、以下の5つのタイプに分類することができます。
①血管に直接作用して血圧を下げるもの
②心臓に作用して、送りだす血液量を減らし、血圧を下げるもの
③尿量を増やして、体内の血液量を減らし、血圧を下げるもの
④自律神経に作用して、体内コントロールによって血圧を下げるもの
⑤血圧をあげる物質を抑えて血圧を下げるもの
今後降圧薬が処方されたとき、どのタイプの降圧薬が使用されているか検討してみると良いでしょう。
血圧を下げる薬を使用した治療の始め方
高血圧の治療は、まずは生活習慣も見直すことが大切です。
肥満、塩分のとり過ぎ、運動不足、暴飲暴食、喫煙などの生活習慣は高血圧を悪化させる要因となるため、これらを改善することにより、血圧を下げることが期待できます。
生活習慣を見直しても、血圧が下がらないようであれば、降圧薬の開始が検討されます。
血圧を下げる薬を服用してはいけない人
降圧薬は種類がたくさんあります。
そのなかには、飲んではいけないわけではありませんが、体の状態によっては飲むことを避けたほうが良い種類の薬もあります。
どういうことなのか、詳しく説明していきます。
血圧が正常な人
まず、降圧薬は血圧が高い人や、心臓病などの治療のために血圧を下げたい人が飲む薬であるということを理解しましょう。
一度測った血圧が高くて気になる場合でも、血圧は一日の中で変化があるため、次に測ったときには通常の値に戻っていることもあります。
降圧薬を飲むかどうかの自己判断はせず、定期的に病院で医師の指示を仰ぐようにしてください。
妊娠中の人
妊娠中の方は、レニンアンジオテンシン系阻害薬は使わないようにしましょう。
レニンアンジオテンシン系阻害薬は、レニンアンジオテンシンの働きを阻害する薬ですが、アンジオテンシンは妊娠初期において腎臓の成長に必須のホルモンです。
アンジオテンシンが正常に働かなかった場合、赤ちゃんに腎奇形のリスクがあります。
降圧薬を使用する治療を検討する場合、妊娠の有無について必ず医師に伝えるようにしてください。
合併症を持つ人
心不全、頻脈、狭心症、心筋梗塞を発症した後は、高血圧の有無に関わらず、まずはβ遮断薬を開始します。
このように、合併症によっては最初に飲むべき降圧薬が決まっているものも見られます。
血圧を下げる薬を飲み始めてから効果が出るまでの期間
降圧薬を飲み始めてすぐに血圧低下が期待できるわけではありません。
血圧が高いからと言って、急激に血圧を下げてしまうと、めまいやふらつきなどの副作用の症状が出てしまうことがあります。
副作用が起きないように、およそ2~3か月かけてゆっくり血圧を下げていくことを理解しておきましょう。
血圧を下げる薬の副作用
降圧薬を飲んでいると、副作用が出現する可能性があります。
副作用が出現する可能性は低いですが、どのような症状が出るのか理解しておきましょう。
むくみ
むくみはカルシウム拮抗薬に分類される降圧薬の副作用としてよく見られるとされています。
これは、カルシウム拮抗薬が血管の動脈を優先的に拡張し、毛細血管内の静水圧が上昇してしまうためです。
むくみの出現部位としては脚が多くみられます。
空咳(痰の絡まない咳)
空咳はアンギオテンシン変換酵素阻害薬に分類される降圧薬によく見られます。
飲み始めて数週間後に出現し、痰の絡まない持続的な咳が夜間帯に見られることが特徴です。
内服する時間を寝る前にしたほうが、出現率は低くなるとされています。
低カリウム血症 低ナトリウム血症
利尿系の降圧薬の副作用として、低カリウム血症や低ナトリウム血症があります。
低カリウム血症ではこむら返りや動悸、低ナトリウム血症では倦怠感などが症状として見られます。
代謝異常の原因にもなるため、少量ずつ飲み始めることが基本です。
血圧を下げる薬の服用中に注意すること
降圧薬を飲んでいる期間中、注意すべきことがいくつかあります。
降圧薬の効果を出すためにも、これから紹介する注意点には十分に気を付けていきましょう。
自己判断で薬の量を変えない
薬の量を自己判断で変えないようにしてください。
体調の変化に不安を感じ、自己判断で内服をやめてしまうと、症状をさらに悪化させる可能性があります。
体調が心配という場合は、まずは医師にすぐに相談するようにしましょう。
血圧を上げるほかの薬剤と降圧薬の組み合わせ
他の科の疾患で処方された薬でも、組み合わせによっては降圧薬の作用を変えてしまうものもあります。
抗がん剤や痛み止め、漢方など薬の種類は様々です。
内服している薬がある場合には、降圧薬を飲み始める前に必ず医師に伝えるようにしましょう。
長期間薬を服用する場合の注意点
高齢の方や、降圧薬を数十年内服され続けている方は副作用が出現しやすくなっています。
これは、年齢を重ねるごとに、心機能や腎機能などの生理機能が低下してくるためです。
体調の変化や違和感など、不安に感じることがあれば、速やかに医師に相談するようにしましょう。
血圧を下げる薬とグレープフルーツの関係
グレープフルーツは降圧薬と相互作用があるため注意が必要です。
グレープフルーツを摂取するだけでは血圧を下げることはありませんが、降圧薬を内服中に摂取すると、極端に薬の効果が強くなり、血圧が下がることがあります。
これは、グレープフルーツのなかに含まれる「フラノクマリン」という物質が、薬を分解する小腸の酵素の働きを阻害するためです。
とはいえ、すべての降圧薬がグレープフルーツと相互作用を持つわけではありません。
自分の飲んでいる降圧薬がグレープフルーツと相互作用を持っているか気になる場合は医師に確認すると良いでしょう。
血圧を下げる薬を飲むメリット
降圧薬を飲むことに対して不安のある方や、そもそも薬自体に苦手意識を持たれているかたもおられるかもしれません。
ここでは、降圧薬を飲むことによって得られるメリットを紹介しています。
もしかすると降圧薬に対するイメージが変わるかもしれませんよ。
心血管病などの発症、進展、再発の抑制
高血圧は、別名「サイレントキラー」と呼ばれる疾患で、自覚症状がほとんどなく、ゆっくりと静かに進行していきます。
気づいた頃には血管を傷め、動脈硬化をきっかけに心臓病や脳卒中、腎臓病などを引き起こしかねません。
このような危険は、降圧薬を内服して血圧を下げることにより抑えることが可能です。
他の方法に比べて血圧を下げる効果が大きい
降圧薬は、高血圧の治療として、他の方法よりも血圧を下げる効果が大きくなるとされています。
高血圧の治療が生活習慣の見直しだけだと、血圧を下げるには十分な時間が必要です。
しかし、降圧薬はきちんと治療を行うことにより、より高い改善効果が期待できます。
合併症やほかの病気の抑制
降圧薬を飲むことにより、合併症や他の病気の発症を抑えることが期待できます。
例えば、もし高血圧の治療をそのまま放置していた場合、血管や心臓に負担がかかります。
そうすると、様々な合併症やその他の病気を引き起こす可能性が高くなってしまうのです。
高血圧は自覚症状がないため、気がつかないうちに進行している場合もあるので、早い段階での治療が必要であるということを理解しておきましょう。
血圧が安定する
降圧薬を決められた量で正しく内服できていれば、安定した血圧を保つことができます。
そのため、毎日の血圧の変動に対する不安も少なくなり、身体の調子も整えやすくなります。
血圧を下げる薬を飲むデメリット
血圧を下げる薬を飲むことにはもちろんデメリットもあります。
どのようなメリットがあるのか一つ一つ説明していきます。
副作用が生じる場合がある
人によっては副作用が生じる可能性があります。
降圧薬の種類によっても症状が異なりますし、すべての人が同じ副作用の症状がでるとは限りません。
降圧薬を飲んでアレルギー反応が出た場合は、体と薬の相性が合わないので、内服を中止する必要がありますので、医師に報告するようにしましょう。
他の薬との飲み合わせについて
他の薬との飲み合わせによって副作用が出現する可能性もあります。
他にも、降圧薬の作用を高めたり弱めたりすることも可能性として考えられます。
降圧薬を飲み始める際には、他に飲んでいる薬がある場合は必ず処方する医師に報告するようにしましょう。
薬を飲む以外の血圧を下げる方法
高血圧になると降圧薬を飲むしか治す手段はないのかと言えば、そのようなことはありません。日頃の生活習慣を変えるだけでも、血圧を下げることは可能です。
1つずつ順番にみていきましょう。
減塩を心がける
減塩をすることは血圧を下げることにつながるとされています。
日本高血圧学会で推奨されている塩分の一日当たりの摂取量は6グラムです。
普段取っている食事の塩分の半分程度と考えてください。
減塩すると普段の食事よりもかなり薄味になってしまうため、物足りなく感じてしまうかもしれません。
しかし、塩分の代わりに香辛料や香味野菜、酢などを加えれば美味しく頂けることもあります。
他にも、麺類の汁は飲まないように心がけることも、減塩につながりますよ。
身体を動かすようにする
日頃から身体を動かすようにしていきましょう。
定期的な有酸素運動を毎日30分、または週に150分やることで、収縮血圧は約4mmhg~9mmhg下がると言われています。
まずは自分にとって取り組みやすい簡単なことから取り組んでみましょう。
ただし、症状によっては運動を控えるように言われる方もおられるので、まずは医師に相談し、運動方法について指示を受けるようにしてください。
健康的な食生活を心がける
食事においても意識し、健康的な食生活を心がけましょう。
間違った食生活だと効果が期待できないため、まずは医師に食生活に関して指示を受けてください。
そのうえで、以下のようなものを食事に積極的に取り入れてみましょう。
- 血圧を下げる効果のあるカリウムを多く含む野菜や果物
- 塩分の排出を促す「カリウム」「カルシウム」「マグネシウム」の3つが含まれた大豆製品
- 血圧を下げる効果のあるカテキンを含む緑茶
- 油が多いものは控え、野菜や魚中心の食事にする
ひとつのものを極端に取り入れるのではなく、バランスよく取り入れることが大切です。
減量を心がける
体重の増加は高血圧の原因になります。食べすぎないように、日頃から食事摂取量は腹八分目を心がけるようにしましょう。
また、体重の変化を把握できるよう、定期的に体重測定を行うようにしてください。
アルコールの摂取量を減らす
過度の飲酒は高血圧の原因につながります。
飲酒する際のおつまみも塩分が高いため、血圧に悪影響を及ぼします。
毎日飲む量を減らし、週1日以上の休肝日をつくるようにしましょう。
血圧を下げる薬と血圧を下げるサプリの違い
血圧を下げるために内服するものとして、薬とサプリがありますが、この2つは次のような違いがあります。
医師が処方する薬は、一定の臨床試験を経た後に厚生労働省に許可されたものです。
それに対し、サプリは厚生労働省が定めた一定の基準を満たした成分を摂取できるように工夫された食品に該当します。
よって、効果は薬のほうが高くなります。
血圧を下げる薬に関するよくある質問
血圧を下げる薬に関して、疑問を持たれやすい内容について説明しています。
ご自身が感じている悩みの解決のきっかけになるかもしれませんよ。
降圧薬を服用中に食事で気を付けることは?
降圧薬を内服している期間において、バランスの良い食事をとることが大切です。
また、塩分の過剰摂取は降圧薬の効果を弱めてしまうため、塩分控え目の食事を意識するようにしましょう。
薬さえ飲んでいれば血圧は下がる?
そもそも、降圧薬は食事療法や運動療法を続けることを前提として処方されていることがほとんどです。
乱れた生活習慣だと、降圧薬を飲んでいたとしても血圧が上がる可能性もあります。
生活習慣を見直すことは、降圧剤を飲み続ける期間に影響するため、少しずつでも生活習慣を改めていきましょう。
血圧が安定したらすぐに薬をやめてもよい?
降圧薬を内服することによって血圧が安定している状態です。
内服を急にやめてしまうと、かえって血圧が高くなる可能性があります。
減量や中止については必ず医師に相談し、指示を受けるようにしてください。
降圧剤(血圧を下げる薬)はずっと飲み続けなくてはいけませんか?
降圧剤はずっと飲み続ける必要はありません。
降圧剤を飲み続けているのは、内服をやめてしまうと、また血圧が高い状態に戻ってしまうためです。
高血圧の原因となった生活習慣の改善を行うことで内服をやめることができた方もおられます。
なぜ何種類もの降圧剤(血圧を下げる薬)を飲む必要があるの?
降圧薬を1種類だけ飲んでいたとしても、目標の血圧値まで低下しない場合があります。
血圧の値が低下しない場合は作用の異なる複数の種類の降圧薬を同時に内服して治療を行うこともあります。
また、特定の降圧薬を多量に内服してしまうと、副作用のリスクが高くなることも、複数の降圧薬を内服する理由の1つです。
副作用のリスクを下げるためにも、種類の異なる降圧薬を用いて治療を行います。
血圧を下げる薬のまとめ
ここまで血圧を下げる薬についてお伝えしてきました。
血圧を下げる薬の要点をまとめると以下の通りです。
- 降圧薬の種類は作用によって5種類に分類される
- 薬を飲み始める際の注意点として、飲み方や生活習慣の改善も必要
- 降圧薬のメリットとして、効果がみられるのが早い
- 降圧薬のデメリットとして、副作用が出現する可能性がある
- 降圧薬以外で血圧を下げる方法は日常生活のなかにある
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。