高血圧はなぜいけない?高血圧がもたらす大病と治療法をわかりやすく解説!

  • 2023年2月22日
  • 2023年7月28日
  • 血圧

健康診断で「血圧が高いかも」と気にする方も多いのではないでしょうか。
日本人にとって国民病とも言われる高血圧。
無症状で身体を痛めつけるためサイレントキラーと呼ばれています。

本記事では高血圧について以下の点を中心にご紹介します。

  • 血圧の基準
  • 高血圧の原因
  • 高血圧の症状
  • 高血圧の改善方法

高血圧について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

血圧の基準値

血圧とは、血液が動脈を流れる際に血管の内側にかかる圧力のことです。
血圧の「上」や「下」という言い方は以下を意味します。

  • 心臓が収縮して血液を送り出したときの収縮期血圧(最高血圧)
  • 心臓が拡張したときの拡張期血圧(最低血圧)

成人における血圧値の分類は以下になります。(mmHg)

分類 診察室血圧 家庭内血圧
収縮期血圧
(最高血圧)
拡張期血圧
(最低血圧)
収縮期血圧
(最高血圧)
拡張期血圧
(最低血圧)
正常血圧     <120         かつ      <80       <115         かつ        <75
正常高血圧   120~129       かつ         <80   115~124      かつ        <75
高値血圧 130~139  かつ/または  80~90   125~134 かつ/または 75~84
Ⅰ 度高血圧 140~159  かつ/または  90~99   135~144 かつ/または 85~89
Ⅱ 度高血圧 160~179 かつ/または 100~109   145~159 かつ/または 90~99
Ⅲ 度高血圧       ≧ 180     かつ/または  ≧ 110     ≧ 160    かつ/または    ≧100
(孤立性)収縮期高血圧       ≧140           かつ          <90     ≧ 135           かつ         <85

出典:「血圧の正常について 田園調布高血圧クリニック かなえ」

低血圧については明確な定義はありません。
WHOでは世界基準として以下を低血圧としています。

  • 収縮期血圧(上)  100(mmHg)以下
  • 拡張期血圧(下)  60(mmHg)以下

主に基準を下回った状態で、他の症状がある場合は注意が必要とされています。

出典:「低血圧とは? 愛知県薬剤師会」

高血圧の原因

塩分

食塩にはナトリウムと呼ばれる成分が含まれます。
ナトリウムを多く摂ると、血液の濃度が高くなります。
すると、浸透圧を一定に保とうとする働きにより血液中に水分が増えるとされています。

しかし水分だけが増えることはなく、水分と同時に血液量も増えることにつながります。
血液量が増えると、血管壁にかかる負担が大きくなり、血圧が上昇する可能性があります。

出典:「減塩・栄養委員会 日本高血圧学会」

飲酒

体内に吸収されたアルコールはアセトアルデヒドに変化します。
アセトアルデヒドは血管を広げるので、一時的に血圧が下がるとされています。

しかし、過度な飲酒や長期的な飲酒により血中濃度は下がる場合があります。
血中濃度が下がると、血管は収縮します。
血管が収縮することにより、結果として血圧は上昇する可能性があります。

出典:「高血圧ガイドライン2019」

喫煙

たばこに含まれる有害物質は200種類以上とされています。
中でもニコチンは、血圧に影響を与える物質の一つとされています。

ニコチンの特徴として以下があげられます。

  • 依存性が高い
  • 血管の収縮
  • 血中コレステロール増加を招く
  • 動脈硬化を促進させる可能性

たばこを吸うと交感神経の刺激により、血圧があがり脈拍が増える場合があります。
ニコチンが体内に吸収され、血管の収縮が促されるためです。

たばこを1本吸うことにより血圧は10~20mmHg上昇し、30分前後続く可能性があげられています。
1日に1箱(20本)吸う人で単純計算すると、寝ている時間・入浴時間や食事などを省くと、起きているほとんどの時間が高血圧状態になってしまうとが考えられます。

出典:「喫煙と循環器疾患 広島医師会」

肥満

血圧はホルモンや自律神経により適切に調整されるとされています。
肥満である場合、お腹にたまった脂肪細胞から様々な物質が分泌される場合があります。
脂肪細胞から分泌された物質は、ホルモンや自律神経の働きを乱す可能性が考えられます。
結果的に血管が過剰に収縮する・塩分が必要以上に体内にたまり、血圧があがるとされています。

さらに、肥満の方は食べ過ぎる傾向が考えられます。
食べ過ぎにより食塩の過剰摂取につながり、いっそう血圧上昇を引き起こすことがあります。

肥満の方が必ずしも高血圧になるというわけではありません。
しかし、肥満ではない方とくらべ2~3倍の発症リスク上昇が考えられるとされています。

出典:「肥満と血圧の関係 放射線医学県民健康管理センター「県民健康調査」」

ストレス

ストレスは以下の種類に分類されます。

  • 肉体的ストレス
  • 心理的ストレス

肉体的ストレスとは気温などの気候条件のほか、疲労や緊張・睡眠不足などによるストレスです。
一方心理的ストレスとは悩みや怒り・興奮や精神的ショックなどによるストレスです。
どちらの場合でも、人はストレスを受けると血圧が一時的に上昇する可能性があります。

血圧上昇のしくみは以下の通りです。

  1. 交感神経が活性化
  2. 興奮物質アドレナリンやノルアドレナリンが大量放出
  3. 心拍数増加
  4. 心臓が1回の鼓動で送り出す血圧量・心拍出量増加
  5. 血管の収縮が起こる

ストレスによる血圧上昇は、ストレスに対抗する防御反応と考えられています。
良い意味での緊張状態が発生しているとも言われます。

しかし、ストレスを受けた状態が長期間続くと慢性的な高血圧状態につながるとされるため、注意が必要です。

出典:「39.緊張状態による高血圧 一般財団法人 京浜保健衛生協会」

遺伝

高血圧のなかには単一の遺伝子により発症する場合がありますが、これはごくまれと考えられています。
遺伝と生活習慣の組み合わせにより発症する可能性が大半とされています。

生活習慣として以下があげられます。

  • 食生活
  • 運動の習慣
  • ストレスや飲酒
  • 喫煙の有無

「高血圧の家系」であっても生活習慣に気をつかうことによって、高血圧の発症を防ぐ効果が期待されます。

出典:「血圧高い、それ遺伝だから仕方ない? かがやきクリニック」

高血圧の症状

高血圧に自覚症状はほとんどないとされています。
血圧上昇時には以下の症状があげられます。

  • 頭痛
  • めまい
  • 肩こりなど

血圧とは関係なくよく起こる症状のため、高血圧の自覚症状と言い切るには困難となります。

しかし、自覚症状がないからと放置すると様々な合併症を引き起こすリスクが生じます。
高血圧が「サイレントキラー」と呼ばれるのは、症状がないまま身体を蝕んでいくためです。
早期発見・早期対処のためには、定期的に健康診断を受けたり、家庭用血圧器により血圧を測定する習慣が大切です。

出典:「『高血圧』ってどんな病気? 日本臨床内科医会」

高血圧のデメリット

高血圧のデメリットは以下の通りです。

  • 血管への負担
  • 脳梗塞や脳出血のリスク

詳しく解説していきます。

血管へ大きな負担がかかる

高血圧とは血管に強い圧力がかかっている状態です。
血管を流れる血液の圧力が増すと、常に血管に刺激がかかる状態が生じえます。
血管に刺激がかかると、動脈(酸素を届ける血管)の傷みにつながると考えられます。

また、血管の壁は本来弾力性があるとされます。
しかし高血圧状態が続くことにより、血管は常に張りつめた状態におかれ、次第に厚く硬くなることを引き起こすリスクが考えられます。
以上の症状が高血圧による動脈硬化と呼ばれ、様々な合併症につながる危険性があります。

出典:「【高血圧】自覚症状がないまま動脈硬化を新恋させます 全国健康保険協会」
出典:「高血圧 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター」

脳梗塞や脳出血を引き起こすリスクが高い

脳に血液が流れなくなることにより、脳の神経細胞が壊死する病気全般を脳卒中といいます。
脳の動脈が詰まったり破れることにより脳への血流量が減少します。
すると、脳の神経細胞に障害が起き、以下の症状が生じるとされています。

  • 半身のしびれや麻痺
  • 言語障害や意識障害
  • 感覚障害や平衡障害
  • けいれん
  • 視野障害や視力障害
  • 頭痛など

原因により、脳梗塞と脳出血などに分類されます。

脳卒中の原因の1つに動脈硬化があげられます。
血管内膜が厚くなり、血管の通りが狭くなります。
結果として、血管がつまりやすくなる・必要量の血液が流れなくなり、脳梗塞につながると考えられます。
実際、最高血圧が160mmHg以上の場合は3.46倍、最低血圧が95mmHg以上の場合は3.18倍の脳梗塞発症リスクが高まるという報告があります。

また高血圧の程度が強い場合、脳の血管が破れる脳出血のリスクが高まる可能性があります。
脳出血・脳梗塞の後遺症には以下症状があげられます。

  • 片麻痺
  • 運動麻痺や運動障害
  • 構音障害
  • 記憶障害
  • 注意障害
  • 感情障害など

脳出血・脳梗塞ともに、後遺症の種類や程度は脳の損傷部位により異なるとされています。

出典:「脳障害・脳卒中 e-ヘルスネット(厚生労働省)」
出典:「脳梗塞について 横浜新都心脳神経外科病院」
出典:「高血圧と脳梗塞の関係とは? eHealthClinic」

高血圧を改善する方法

高血圧の改善方法は以下の通りです。。

  • 減塩
  • 適正量の飲酒
  • 禁煙
  • 運動
  • 薬の服用

詳しく解説していきます。

塩分を控える

高血圧対策としてまず、「減塩」を考える方が多いのではないでしょうか。
日本での塩分摂取量は依然多く、食塩制限は正常血圧の方にとっても高血圧の予防効果に期待できます。

日本高血圧学会は高血圧の治療において1日6g未満を推奨しています。
また大人になってからの高血圧などを防ぐために、子供の頃から食塩を制限することが望ましいも考えられています。

出典:「減塩・栄養委員会 日本高血圧学会」

飲酒量を減らす

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」では、1日のアルコール摂取量を以下としています。

  • 男性 20~30ml以下
  • 女性 10~20ml以下

アルコール量20mlをアルコール飲料に換算すると以下になります。

アルコール飲料
ビール(アルコール度数5%) 500ml(ロング缶1本)
日本酒(アルコール度数15%) 180ml(1合)
焼酎(アルコール度数25%) 110ml (0.6号)
缶チューハイ(アルコール度数5%) 500ml(ロング缶1本)
ウイスキー(アルコール度数43%) 60ml(ダブル1杯)
ワイン(アルコール度数14%) 180ml(¼本)

また休みなく毎日飲むことを避け、週に数日の休肝日を作ることが大切です。

出典:「高血圧治療ガイドライン2019 日本高血圧学会」

禁煙

高血圧の方は、心筋梗塞や脳卒中の原因と考えられる動脈硬化が進みやすいとされています。
そして、喫煙は、動脈硬化のリスクをさらに高める可能性があります。
できる限り本数を減らしたり、外来に通って禁煙に努めることが大切です。

また、受動喫煙対策により、路上喫煙禁止や公共の空間における禁煙が進んでいます。
一方で、無煙たばこや電子たばこなど新たなたばこ製品が登場しています。
新たに登場しているたばこ製品にも、発がん性物質や有害物質が含まれていることへの認識を持つことは大切です。

出典:「禁煙コーナー(禁煙と高血圧について) 広島県医師会」
出典:「禁煙宣言 日本高血圧学会」

適度な運動

高血圧の治療の基本は生活習慣の修正(運動治療・食事治療)と薬物治療があります。
運動治療として以下の方法が推奨されます。

  • 定期的に(できれば毎日)実施
  • 30分以上
  • 中等度(ややきつい程度)
  • 有酸素運動

運動をすると、一時的に血圧が上がります。
しかし、適度な運動を継続すると、筋肉にたくさんの酸素や栄養を運ぶとされています。
その結果、血管が広がる・血圧を上げようと働く交感神経の緊張穏和が期待でき、血圧低下の効果が見込めます。

出典:「高血圧症を改善するための運動 厚生労働省」

血圧を下げる薬を服用する

上記でもふれましたが、高血圧の治療の基本は、生活習慣の修正と薬物治療です。
一般的に、生活習慣の修正だけでは血圧が下がらない場合に薬物治療を併用することで効果が見込めます。

高血圧の治療で処方される薬は「降圧薬」と呼ばれます。
降圧薬の必要性や有効性は、高血圧や背景にある病気の可能性によってもかなり異なるとされています。
きちんとした医師による検査のうえで、降圧薬の処方を受けることが大切です。

出典:「降圧薬(高血圧に対するお薬) 医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院」

高血圧に関するよくある質問

高血圧に関するよくある質問は以下の通りです。

  • 症状がなければ治療も必要ない?
  • 薬で基準値になれば服用をやめてもいいの?
  • 病院での測定で血圧が上がる理由とは?
  • 1日の中で血圧にばらつきがある理由とは?

詳しく解説していきます。

症状がなければ治療しなくても大丈夫ですか?

高血圧の怖さは、自覚症状がほとんどないまま動脈硬化を引き起こす可能性があることです。
自覚症状がないので、健康診断などで指摘されても放置してしまう方が少なくないです。

しかし、自覚症状がないまま血圧が高い状態が続くと動脈硬化を引き起こすリスクが高まってしまいます。
また、自覚症状がないまま重症になってしまう可能性もあります。
日々の血圧測定などで健康管理をし、自覚症状が現れる前に治療に取り組むことが大切です。

薬で血圧が基準値まで下がれば、内服は中止してもいいですか?

高血圧の薬は、高い数値を下げる作用がある薬で、高血圧自体を治す薬ではないとされています。
薬の服用により、血圧低下の効果が見込めます。

しかし、「治った」と思い、服用を中止すると、再び高い血圧数値に戻る可能性があります。
医師の指示に従い、ある程度継続して飲み続けることが大切です。

普段は基準値だけど、病院で測ると血圧が高くなるのはなぜですか?

血圧は絶えず変動していて、ストレスを受けると上昇する可能性があります。
家で測定すると正常なのに、病院で測ると血圧が上がる方は少なくないです。
病院で測定した血圧が高血圧(≧140/90mmHg)で、病院以外で正常値を示す状態を「白衣高血圧」といいます。

また、病院に来ている緊張感やストレスによる血圧上昇は「白衣現象」と呼ばれています。
白衣高血圧は合併症がない場合には一般的に、治療は必要ないとされています。

しかし、全く高血圧がない方と比べると、やはりリスクの可能性はあります。
早期発見ができるよう、家庭血圧測定や定期的な健康診断での経過観察が大切です。

出典:「病院で測るときだけ血圧が高い?意外と多い白衣高血圧」

一日の中で血圧にばらつきがあるのはなぜですか?

普通の生活をしていても血圧は変動します。
例えば24時間血圧計で測定すると以下の状態になります。

  • 朝起きてから徐々に上昇
  • 活動する日中は高くなる
  • 夜になるにつれ下降
  • 睡眠中はさらに下降

1日の変動パターンは「日内変動」と呼ばれます。
血圧は、交感神経が活発になる日中に上昇し、副交感神経が活発になる夜中に下降するとされています。

出典:「血圧とは一日の中で変化する さかい医院」

高血圧のまとめ

ここまで高血圧についてお伝えしてきました。
高血圧についてまとめると以下の通りです。

  • 高血圧の基準は診察室診療で140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上
  • 塩分・飲酒・喫煙・肥満・ストレス・肥満が原因
  • 高血圧は自覚症状がほとんどない
  • 血管への負担や脳卒中を引き起こすリスクが高くなる
  • 減塩・飲酒量の見直し・禁煙・運動・薬の服用で改善効果に期待できる

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。